00 夏の牢屋とメロンパン

お題:夏の牢屋
必須要素:メロンパン
制限時間:15分

ここの監獄は、夏になると地獄のような蒸し暑さが増す。
彼は自室に籠り壁に背中を付けて寄り掛かったまま、何をするでも無くぼうっと宙を見つめていた。

「あっ、ハンス兄~」

前を通りかかった茶髪の少年、フィンがにこにこと笑顔を浮かべて格子をくぐって来る。
監獄といってもここは特に行動が制限されている訳ではなく、牢屋は唯の自室と化している。

「暑いねぇ~」

「お前は涼しそうだな」

「そう?オレは美味しそうなもの貰ったから御機嫌なだけ!」

にこ、とまた笑って持ち上げた左手には、膨らんだ紙袋。
何やら甘くて香ばしい香りが漂っているが、ハンスはあからさまに眉を寄せた。

「…それ」

「ふふ、メロンパ~ン!看守さんに貰ったの!ハンス兄も食べる?」

「はぁ?そんな甘ったるいモン食えるか」

やっぱり?とフィンは笑って、自分の体重を5kgに変化させるとハンスの膝上へと座る。そのままメロンパンを取り出すと、黙々と食べ始めた。
重さはさほど感じないものの、フィンの体温で暑さは倍増する。
ハンスは右手からサバイバルナイフを出現させ、フィンに突きつけた。

「暑い、退け」

「え~、やだ!オレハンス兄の膝の上好きだからここで食う」

「暑いし邪魔だ、っつってんだ、餓鬼」

ハンスはナイフを付けられても動じないフィンの首根っこを掴むと、床に放り投げる。
フィンは楽しそうに笑うと、宙返りをして地面に降り立った。

「もう乗らないから、ここに居るだけいいでしょ?」

「ふざけんな、食ったら出てけ」

何だかんだで、馴れ合ってしまう2人であった。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です